補聴器の歴史:時代とともに進化した「聞こえ」の技術
補聴器と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?
「大きくて目立つ」「年配の人が使うもの」という印象を持つ方も、まだ多いかもしれません。ですが近年、補聴器は驚くほど進化し、今ではスタイリッシュで高性能な“パーソナルヒアリングデバイス”へと生まれ変わっています。
実際、最近イギリスで行われた調査では65%の人が「最新技術の進化によって、必要になれば補聴器を使ってみたい」と答えています。実際のところ、現在の補聴器は、より洗練され、スタイリッシュになっています。一人ひとりの聴力や生活スタイルに合わせて、細やかに調整されたコンパクトな補聴器が提供されています。
ここに至るまでには長い試行錯誤の歴史があります。補聴器の歩みは、人の「もっと聞き取りやすく」「毎日を快適に過ごしたい」という願いを形にしてきた物語でもあるのです。
13世紀 ― 動物の角を使った原始的な補聴器

人類が誕生した時から、聞こえの問題は存在していました。
当時の人々も、なんとかして聞こえを良くしようと工夫を凝らしていたと考えられています。しかし、古代文化の多くが失われてしまったため、そうした先駆的な試みについてはほとんど記録が残っていません。
現存する最古の記録によると、13世紀には動物の角を使った原始的な聴覚補助具が作られていたようです。家畜として飼育されていた牛や雄羊が、この原材料の主な供給源であったと考えられています。
18世紀 ― ラッパ型補聴器(イヤートランペット)の登場

1634年に発明されたイヤートランペットと呼ばれるラッパ型の補聴器は、補聴器開発の最初の本格的な一歩でした。しかし、広く使われるようになるまでには、1世紀半以上かかりました。
ラッパのような漏斗状のデザインを持つイヤートランペットは、周囲の音を集めて、細い管を通して直接耳に届ける仕組みで、音を増幅する機能はありませんでしたが、原始的な聴覚補助手段として役立ちました。
一方で、見た目が大きく、持ち歩くのも不便だったため、その後に誕生した伝声管(スピーキングチューブ)も含め、聞こえの悩みを抱える多くの人の日常を変えるところまでは至りませんでした。
本格的な改良が進むのは、電気技術へ移行が進んだ19世紀に入ってからでした。
19世紀 ― 電気の時代へ

1876年にアレクサンダー・グラハム・ベルが「電話」を発明したことは、補聴器の進化における大きな転換点となりました。受話器を通して相手の声を聴くという仕組みは、「離れていても声が届く」という点で、補聴器の原理にも通じるものでした。
この発明により、自身も難聴だった発明家トーマス・エジソンは、電気信号を増幅するだけでなく、デシベル数も増やせる「カーボン送話器」を開発します。
この技術が補聴器開発において重要な役割を果たすようになりました。
当時は、扱える周波数帯域が限られ、雑音が多く音質に課題があったりと制約も多くありましたが、それでも20世紀に入るまで、この「カーボン式補聴器」が主流として使われ続けました。
20世紀 ― 技術革新の時代

1913年頃には、初めて商業的に製造された補聴器が登場します。
以降、20世紀を通して補聴器は急速に進化し、新多くの人が必要な聴覚補助を得られるようになりました。
この時期に起こった主な技術的な進歩を挙げると――
・真空管式補聴器(1920~1952):カーボン式よりも安定した電気制御が可能になりました
・トランジスタ技術の登場(1950年代):トランジスタの普及により、補聴器は軽量かつコンパクトな機器として製造できるようになりました。耳の中や耳の後ろに装着することが可能になり、ある程度目立たず装用できるようになりました。
・アナログからデジタル化へ(1980年代~):技術が進化するにつれ、補聴器は次々と改良されていきました。より個々のニーズにあった性能が追加され、装用が気にならない補聴器が発売されました。1980年代の高速コンピューティング技術の発展により、例えば充電式電池の採用など、新しい機能が次々と実現しました。1990年代には完全デジタル補聴器が主流となりました。
21世紀 ― デジタル時代の“聞こえ”

そして現代。
難聴があっても、以前と比べてずっと快適に生活を送りやすい時代になってきました。
最新の補聴器は、ユーザーお一人おひとりの聴力に合わせて細かく調整でき、さまざまな生活環境に適応できるよう設計されています。
さらに、テレコイル、Bluetooth、FM通信などを通じて、パソコンやスマートテレビ、スマートフォンとワイヤレス接続が可能です。公共の音声案内システムなど、対応するネットワークにつなぐことで、より聞き取りやすい環境づくりにも役立ちます。
そして近年では、ハンズフリー通話や外部受信機なしでの直接音声ストリーミングに対応する補聴器も登場しています。
補聴器は、「昔ながらの大きくて目立つ装置」というイメージから、日常になじむスマートな機器へと進化しました。今の補聴器なら、あなたの“聞こえ”にぴったり寄り添う一台がきっと見つかるはずです。
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補聴器を検討するときは
まずは耳鼻咽喉科専門医に相談し、聴力検査などを通じて、補聴器が有効かどうか診断してもらいましょう。
お近くのオーディオ・ノバでも、専門医のご紹介や、聞こえや補聴器に関するご相談を承っています。
「少し聞き取りづらいことが増えたかな」と感じたときこそ、早めにご相談いただくことで、より快適な毎日につながります。どうぞお気軽にお問い合わせください。